ジェレミー・シーゲルの著書『株式投資の未来(The Future for Investors)』でも「成長の罠(Growth Trap)」として詳しく分析されている、高成長企業(仮想IBM)と成熟企業(仮想XOM)のシミュレーションを実行しました。
配当をすべて再投資した際、なぜEPS(1株当たり利益)で劣るXOMが最終的なリターンで勝つのか。客観的な数値データに基づくシミュレーション結果を解説します。
シミュレーションの前提条件
初期投資額をそれぞれ1,000ドル(株価100ドル×10株)とし、50年間の推移を計算します。
バリュエーション(PER)の調整として、高成長のIBMは時間の経過とともに成長が鈍化し、市場の期待値(PER)が平均水準に収束していく現実的な推移を設定しています。
- 仮想IBM(高成長・高期待・低配当)
- 初期PER: 40倍(50年後に15倍へ低下)
- EPS成長率: 年率10%
- 配当性向: 30%
- 仮想XOM(低成長・低期待・高配当)
- 初期PER: 12倍(50年間一定)
- EPS成長率: 年率6%
- 配当性向: 60%
50年後の結果比較
| 項目 | 仮想IBM (高成長) | 仮想XOM (成熟) | 勝者 |
|---|---|---|---|
| 最終EPS(1株利益) | 293ドル | 153ドル | IBM (約1.9倍の利益水準) |
| 最終株価 | 4,402ドル | 1,842ドル | IBM (約2.4倍の株価) |
| 最終保有株数 | 18株 | 114株 | XOM (約6.3倍の株数) |
| 最終的な総資産額 | 約79,493ドル | 約211,231ドル | XOM (約2.6倍の資産額) |
大きな差が生まれる「カラクリ」
企業の業績(EPS)と株価単体の成長では仮想IBMが圧倒していますが、総資産額では仮想XOMが圧勝します。この逆転現象の理由は以下の2点に集約されます。
1. 配当利回りと再投資の効率(保有株数の爆発)
配当再投資によるリターンの源泉は「再投資時の株価の安さ(利回りの高さ)」です。
仮想XOMはPERが12倍と常に割安に放置されているため、配当利回りが高くなります。受け取った多額の配当金で「安い株」を大量に買い増すことができます。結果として、50年間で株数は10株から114株へと爆発的に増加しました。
一方の仮想IBMは株価が割高(PERが高い)であるため、配当金で買い増せる株数が少なく、50年経っても18株にしかなりません。
2. バリュエーション(PER)の収縮による「成長の罠」
仮想IBMのEPSは年率10%で劇的に成長しましたが、株価はそれに比例して上昇しませんでした。初期の株価にはすでに「将来の高い成長」が織り込まれており(PER40倍)、企業が成熟するにつれてそのプレミアム(期待値)が剥がれ落ちた(PER15倍へ低下)ためです。
結論として、長期の配当再投資においては「企業の利益成長率」以上に、「どれだけ割安な価格で株数を雪だるま式に増やせるか」がトータルリターンを決定づける最大の要因となります。
成長の罠・配当再投資シミュレーター (50年)
🔵 仮想IBM (高成長)
🟢 仮想XOM (成熟)
50年後の結果サマリー
| 項目 | 🔵 仮想IBM | 🟢 仮想XOM |
|---|---|---|
| 最終総資産額 | ||
| 最終保有株数 | ||
| 最終EPS |
